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彼氏ができた、なんて。
レイコの相手をまともにできる人間が僕以外にいるわけないのに。
僕だけが、頭のおかしいレイコの相手をしてやってたのに。
『だからね、拓実くん。もう……その、付きまとってくるのを、やめてほしくて』
知らない男子と腕を組んで、目を伏せたレイコ。
白い肌に長い睫毛が落とす影がきれいだった。
白いワンピースがよく似合っていた。
僕は唇が震えるのをどうにか押さえて、首を振った。
『わ、別れたいってこと? そんなこと言ったって、ユウタはどうするんだよ。無責任じゃないか』
『ゆうた……?』
『もうすぐ二歳になるのに、母親がいなくなったら、あいつは……!』
どん、と突き飛ばされた。レイコはそんな乱暴なことはしない。やったのは男子の方だ。
『キモいよ、お前。麗子が嫌がってるの、わかんねえのかよ』
男子はそう言って僕を見下ろし、レイコの肩を抱き寄せた。
『××くん、乱暴はしないで』
『ちょっと押しただけだよ。麗子は優しいな』
男子の名前はもう覚えていない。このやりとりを聞いた後の、記憶自体がぐちゃっとしている。
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