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レイコが一人になったところを襲ったんだっけ。それとも、夜にレイコを呼び出したんだっけ。そうだ、家が隣だから、身振り手振りで、謝りたいって窓越しに伝えて呼び出したんだ。
武器はなんだったっけ。僕は素手で人を殺せるほど強くないから、何かを使ったはずだ。図書館から借りた、分厚い本だったかも。人ってそんなもので死ねるほど弱いかな。
とにかくレイコを殺して、桜の木の根元に穴を掘って埋めた。さっきレイコが言ったみたいに。
でも、人一人を埋められるような穴ってそう簡単に掘れるものかな。一年経っても誰にも見つかっていないから、相当深く掘ったはずだ。そうじゃなきゃ、詳しくは知らないけど、腐敗臭とかでとっくに騒ぎになっているはずだ。
そもそも、レイコの両親は娘が死んだのに何も言っていないのかな。学校でもレイコがいなくなったことに誰も気づいていないみたいだった。レイコには友達がいなかったから当然かもしれないけど。あのタイミングでレイコがいなくなったんだから、彼氏だっていうあの男子は少なくとも僕を真っ先に疑ったはずだ。
なのにこの一年、受験が迫っていること以外まったく平和だった。
もしかして、何も起きていないのかも。
この記憶自体が存在しない思い出だったりして。
息が浅くなる。
自分の記憶が信用できない。
僕は、受験のストレスでおかしくなってしまったんだろうか。
「……ほ、掘り返してみよう」
掘ってみて、出てきたら、僕がやってたことになる。何も出なければ、僕がおかしいことになる。
本当に土の中からレイコが出てきたら、自首するつもりだ。最初はレイコが浮気をしたのが悪いけど、浮気と殺人じゃ絶対に殺人の方が罪は大きいもの。でも刑務所はやだな。情状酌量とか、あるかな。
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