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顔は青白く、目の下には濃い隈が出来ているが、ミライに加えられた凄惨な拷問の直後であることを考えれば異常な回復力だった。
それでも、この天使とヴァンパイア王は、今の自分が出し抜ける相手ではないことは本能が伝えていた。
「ちくしょう…痛いよ、痛くてたまんないよ…逆らわないからほどいてくれよ…!」
ミライは無言で蘭玲とタルカンを結ぶ鋼線をグイっと引っ張った。
細い鋼線が喉に食い込み、腕を締め上げる。
相手は人間ではない、生粋のサディストなのだ。
自分もそうであるから、蘭玲にはミライの気持ちがよくわかる。
愛するものでさえ虐めて欲情を昂らせる性癖なのだ、敵など己の欲望のために何の躊躇いもなく滅茶苦茶に壊すまで嬲ることができる。
だから、弱みを見せるほど痛めつけられる。
加虐性の無さそうな天使が先に音を上げてくれることに期待したのだが、必死に耐えているようだ。
「ちくしょう…」
蘭玲は諦めて、牙を剝きだして泣きながら歩きだした。
しばらく進むと、瓦礫の陰に埋もれたハッチらしきものが見えた。
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