復讐者という生き方

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 自分の愛しい美の女神のその様子に、ミライは誇らしい気持ちと熱い欲情が昂ってくる。  ナナは、治安部隊が来る前にこの人々を味方につけてしまうつもりだった。  フルカスのカリスマ性は近距離で対面して語り掛けなければ相手を魅了できない不完全なものだったはずだ。  それに対し、ナナや大天使のカリスマは、発動すれば大衆を扇動する力となる。  大天使のカリスマ性の発動はその条件からして人智を超えているが、ナナの力はその悲壮な使命感により発動し、想いの強さ、深さに比例して高まる。  人間の脆弱な精神を授けられた天使が、泣き出したい、今にも逃げ出したい気持ちを抑え込んで過酷な運命に立ち向かうとき、そのカリスマ性が輝きを増す。  凛とした美しい顔で人々を見回しながら、ナナが震える手でミライの服の裾を掴む。  ミライはその手をそっと優しく、包み込むように握った。  ミライから溢れ出す激しい愛情と陶酔のオーラが、ナナのカリスマ性を高める相乗効果を生むが、本人は全くそのことには気付いていない。  意を決したように、ナナが市民たちの前に進み出た。
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