![f7466a38-fd32-41e9-a21f-06ed9bf3a4ad](https://img.estar.jp/public/user_upload/f7466a38-fd32-41e9-a21f-06ed9bf3a4ad.png?width=800&format=jpg)
ナナを囲むように人だかりが出来ていた。
ナナの姿が見えている者たちがその美しさに陶酔し、棒立ちになっている。
その様子が、どうしてもナナの姿を見たいという衝動を掻き立て、後から後から人々を引き寄せる。
最前列付近は激しく圧縮されているが、それでもナナのところまで雪崩れ込んで来ないのは、ミライが放つ、人間を骨の髄まで震えさせるような殺気のせいだ。
猛烈な死の危険を纏った、美しき天使。
誘蛾灯に誘われる虫のように群がり、死の恐怖と甘美な陶酔による倒錯した興奮が、ナナのカリスマ性を絶対的なものに高める。
「わたしたちは、堕天使フルカスを倒しに来ました」
地下城の新たな支配者、歪んだカリスマで兵士たちを操る不気味な存在の名は、市民たちにも行き届いていた。
支配を円滑に行うために、市民に危害を加えるようなことはしていないが、漠然とした不安や恐怖は与えていた。
天から舞い降りてきたようなナナが、美しい声でその堕天使の存在を何の迷いもなく否定したことが、人々の心を鷲掴みにする。
「あいつらが来てから、うちの息子は様子がおかしいんだ!」
そう叫んだ女を、深い慈悲を湛えた目でナナが見る。
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