復讐者という生き方

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 ナナと視線が合ったことで、女は顔を真っ赤にしてふらつきながら、必死に叫んだ。  「息子は治安部隊の兵士なんだ!あいつらが来てから、別人みたいになっちまった!」  「うちの子もおかしくなっちまった!」  「うちの旦那もおかしいんだよ!」  蘭玲たちの宿舎があった地区には、司令部を守る兵士とその家族も多く住んでいたのだろうか。  次々に堕天使への反感が噴き出す。  治安部隊の兵士の家族という立場上、口に出せずに抑え込んでいた不安が一気に爆発したようだった。  ナナは輝くような美しい顔に、優しい微笑みを浮かべた。  「大丈夫、フルカスを倒して、みなさんの大事な家族を救います」  大天使のカリスマを備えたナナの言葉が、人々の魂を震わせる。  ナナは大天使では無いうえに、人間の脆弱な精神を与えられた天使だ、強すぎるカリスマ性が巻き起こす群衆の熱狂が放つプレッシャーをひとりでは受け止めきれない。  ミライの手を握るその手が震えている。  堕天使を倒せと言う激しい熱狂が群衆に伝染していき、ナナの姿を見ることができない後ろの人々をも巻き込んでいく。
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