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そこは、モスクワの最深部にあった保管庫の様な部屋だった。
中央に台座の様なものがあり、その上にあった何かを、固定するボルトを引きちぎって持ち去った形跡があった。
ナナは台座に歩み寄ると、そっと手を触れた。
目を閉じて、手のひらから何かを感じ取っているかのようだ。
「タルカン…しばらく後ろを向いていて」
そう言うとナナは服を脱ぎ始めた。
慌ててタルカンは後ろを向く。
女王の所有物であるこの天使の、素肌を目にしたとあれば目を潰されるであろう。
全て脱ぎ去って裸になると、ナナは台座の上に横たわった。
ナナは、ここにあった遺跡の量子コンピューターが残していった記憶のかけらを拾い集めている。
生命と機械の中間のような人工の脳を使った超古代のテクノロジーによる量子コンピューターは、その人工細胞に大量のデータを記憶している。
堕天使に無理矢理持ち去られた遺跡のかけらも、細胞レベルの細かな塵に膨大なデータが宿り、過酷な環境で何万年も生きる人工生命の細胞は、すぐには死滅しない。
ナナは、その細胞の塵がまき散らされた台座の上で、直接肌を触れさせることで、全身のナノマシンを使ってデータを読み取っているのだ。
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