復讐者という生き方

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 ロックなら手を触れるだけで即座に記憶を取り込めるだろうが、遺跡がどのような状態にあるのか不確定な状況でお兄様を外に連れ出すというリスクを負うわけにはいかなかったのだ。  塵に宿る情報は、遺跡にとっては微々たるデータでしかない。  それでも人類のテクノロジーによる天使であるナナには、処理に相当な時間を要するデータ量だった。  ナノマシンが読み込んだデータを、ナナの脳の一部に遺伝子操作で設けられた補助脳、神の細胞のレプリカに生体量子コンピューターのデータとして蓄積する。  それをナナの衛星のAIに共有し、ゼロ号機のAIに送ることでロックに届けることができる。  全身が限りなく神のDNAに近い細胞で生み出されたロックならば、塵どころか遺跡まるごとのデータでも一瞬で共有できるのだが、そこに至るまでの処理に時間がかかってしまうのだ。  それでもこうして、ナナが真っ暗な深い地底で素肌を晒して読み込んでいるのは、後であらためてお兄様を連れてきても、塵となった人工細胞が生きているとは限らないからだ。  タルカンが背を向けているのを確かめて、ナナはごろんと仰向けになり、何も隠さずに手足を伸ばした。
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