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敗北者という生き方
フルカスの怒りに反応するように、ハチの動きが凍り付いた。
ヴァンパイアであるミライにはわからなかったが、ナナがいれば、この空間に急激に、濃密なフルカスの気配が満ちてくるのを感じただろう。
「殺せ!」
フルカスの命令で強化兵の生き残りが一斉に動く。
つまらない攻撃だと思った。
天使の一族と言っても、こんなものなのか?
地下要塞にいた頃のミライでは相手にならなかったかもしれないが、今のミライに単調な強化兵の一斉攻撃などもう完全に見切れる。
躱すことのできぬほぼゼロ距離からの短剣を、微妙な身の捻りで急所を避けて受け、反撃するはずだった。
「えっ?」
予想外の痛みと深く刺し込まれた短剣に、ミライが動揺する。
「がはっ…!」
何本もの短剣が肺に刺さり、捩じ込まれる度に血が気管を塞ぐ。
心臓を突き刺しに来た刃を、手を盾にして受けた。
手のひらを向けたのでは貫通して心臓を刺されてしまうから、掌底で受けて手首の方へ根元まで刺し込ませる。
いくらミライでも、痛くて悲鳴を上げ、左腕が動かなくなる。
さらに後ろから来た強化兵がミライの腰のあたりに短剣を刺した。
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