敗北者という生き方

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 ミライが超振動ブレードの中心めがけて剣を思い切り振り下ろすのが見えた。  らせん状に渦巻き、フルカスの手元に向かって収束していくブレードに捕らわれた者は、そこ以外に攻撃することはできない。  そして、そこへの攻撃は確実に粉砕される。  絶対に敵の剣はフルカスの肉体には届かず、敵の本体も渦に呑まれて塵と化す。  所詮こんなものだ!  吸血鬼ごときが、天使に敵うものか!  あとコンマ何秒かで、ミライが粉砕されて決着が付くことを確信したとき、脳天に重い衝撃を感じてフルカスの視界がブラックアウトした。  一瞬で、脳への致命傷だとわかった。  意識が消滅するまでの僅かな時間に、ナノマシンの知覚がフルカスの脳に送り込んだ情報から判断すると、ミライの右肘から先の腕が握った剣が、フルカスの頭部を貫いていた。  こんなバカな戦い方があるか!  吸血鬼は、ヴァンパイア王は、あえて自らの腕を超振動ブレードで切断させてブレードの渦の外から攻撃してきたのだ!  制御を失い、急速に崩壊するブレードに激突し、服と皮膚をズタズタに切り裂かれながらミライがフルカスに掴みかかり、左手で右腕を握ると、頭部を貫通した剣を一気に斬り下げた。
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