敗北者という生き方

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 戦闘の興奮状態から湧き起こる欲情が激しく身を震わせる。  爪と牙が疼き、白く華奢な獲物を求めてわななく。  連合軍は、天使は本当に正しいのか?  その問いは、虚構の地下要塞の暮らしが崩壊し、戦場に放り出されて生きることになったミライにとって、考えてはならぬこと、自らのアイデンティティを揺るがすものだった。  ヴァンパイアは、なりたい自分になる。  精神のあり様が自らを規定する超生物だ。  闇にしか生きられぬ縛りさえ超越したヴァンパイア王は、限りなく自由で、そして、何処にも拠り所が無い。  だから、ナナへのこの熱い欲情と、ナナこそ絶対の正義であるという思いが、ミライが存在し続けるために必要なものであり、安易な逃げ場所でもあった。  今はただ、余計なものを見たくないし、考えたくなかった。  司令部の入り口の前で合流したミライとナナたちは、拘束されていた北京地下城の司令官たちを解放して連合軍基地としての機能を取り戻した。  人民解放軍に引き渡されると聞かされた蘭玲は見逃してくれと泣いて哀願したが、聞き届けられないとわかるとミライとナナを口汚く罵り、必ず殺してやると言いながら連行されていった。
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