敗北者という生き方

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 味方を裏切って甚大な被害を与えた蘭玲が、どんな惨い懲罰を受けて処刑されるかを考えると、ナナは心を痛めているようだったから、無理矢理蘭玲を引っ立てて軍に突き出す役はミライが自ら買って出た。  ナナにそんな辛い指示をさせたくなかった。  ナナは正しく、純粋で気高い存在であるべきなのだ。  地下城とオンカロ、モスクワをナナの衛星を介したネットワークに繋ぎ、ユーラシア大陸における連合軍の拠点を確立すると、天使軍は足早に北京を立ち去ることにした。  この地を訪れた大きな目的である遺跡が奪われてしまったことで、いつまでも滞在する理由はもう無かった。  ゼロ号機に戻ると、エレーナが声をかけてきた。  「ロボットのワンちゃんがお待ちかねよ」  「ハチ…」  ナナは戦闘が終結した後、ハチに別行動で任務を与えていた。  ご主人たちが雑務を片付けている間に、言いつけられた用事を果たして戻ってきたのだろう。  「白い…鴉?」  ハチの前に横たわるのは、まさに、白い鴉にしか見えぬ機械の鳥だった。  「ハチと同様に、わたしの分身、衛星の子機として作られた飛行型ドローン…フルカスに操られていたのを、わたしが撃墜したの」
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