取り戻す世界、奪う世界

天使という生き方

　元々平野の少ない日本列島だが、エイリアン侵攻初期に国が壊滅状態になってしまったため、道路網は大きく寸断されていた。
　「日本は国土の大半が山間部だったから…都市間を連絡する道路は高架やトンネルを多用した高速道路が多かったようね…メンテナンスがされていないと通行は困難だわ」
　衛星からの画像を解析しながら、走破可能な道を探してゼロ号機は進むが、上陸した島根県から、当面の目的地である富士山までの道のりは遠い。
　「ナナ、日本っていうのも、侵攻前の世界における軍事大国の一つだったんでしょう？どうしてこんなに酷いやられ方をしているの？」
　「そうね…理由の一つは、当時Ｇ７と呼ばれていた主要な大国に、集中的にエイリアンが出現した事、そして、島国だった日本は海上の守りに大きな力を割いていて、世界有数の海軍力を持っていたけど、陸上戦力は大陸の国家に比べて圧倒的に数が少なかったの…相当近代化された装備は持っていたはずだけど」
　「でも、それだけ近代化された軍事大国だったら、シェルターは多かったんじゃないの？」
　ナナはその質問に、少し悲し気な顔をして答えた。