ルーツ

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 伊藤知事も40代半ばで政治家としては若手だが、連合軍司令官らしい風格が備わっていた。  知事執務室には他の基地幹部たちも集まっていた。  ゼロ号機の誘導を担当した大島一佐もいる。  皆、間近に見るロック、ナナ、ミライの尋常ではない美しさに圧倒されているようだった。  それでもさすがに、リーダーたる伊藤知事は何とか要件を切り出した。  「本当にお見えになるとは今でも信じられない気分ですが…真っすぐ私たちを訪ねてこられたのは…」  「ええ、あなたたちが、単に逃げ遅れてこの地に留まったのではないことは承知しています」  日本国政府は早い段階で日本列島からの撤退を決断したが、ある目的の為に最小限の兵力を残していった。  「人類は、いずれ天使様が軍勢を率いて地上を取り戻す日の為に、日本国海上自衛隊とアメリカ第7艦隊を中心とした太平洋艦隊の大半の戦力を温存しました」  「わかっています、わたしたちは、それを受け取るために旅をしてきたのですから」  「ああ…100年以上前に課せられた使命が、果たせるのですね」  ミライには状況がよくわからなかった。
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