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ナナは優しく微笑んだ。
里の人々の気持ちを想うように。
「一方通行でも、連絡だけしておいてください、ヴァンパイアが接近すれば、嫌でも動き出すでしょう」
ヴァンパイアハンターの里は東京の西の果て、雲取山の山頂付近にあった。
奥多摩のさらに奥、周囲を山々に囲まれ徒歩でしかたどり着けぬ奥秩父山塊にある、東京唯一の二千メートル級の山だ。
険しい山中はエイリアン出現の頻度が少ないとはいえ、民間人の集落が地上に存在していられるのは、ヴァンパイアを狩るという並外れた戦闘能力が受け継がれているのだろう。
林業などのために整備されていた林道はほぼ消滅しており、かなり手前の舗装路があった痕跡のようなものを進めるだけ進んでから、ゼロ号機を置いて歩き出した。
里を目指すのはナナとミライのふたり、人間が相手なので日中、しかも地上の施設を訪ねるのでタルカンは置いてきた。
代わりに、ナナのしもべたちを放ち、先行させる。
子犬型ドローンのハチと、修理を終えて復活した鳥型の、クロウと名付けられたドローンだ。
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