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「日本の状況は基地で聞いたでしょう?」
佳乃と呼ばれていた女が、さっきよりは落ち着いたのかミライへの嫌悪感を抑えて応える。
「放棄された列島に残されたのは、逃げ遅れた人々を除けば最低限の拠点の維持と連合軍の任務を持った者たちだけ、圧倒的に男性の比率が高い状態で隔離されてきたのよ」
佳乃はうんざりしたようにため息をついた。
「特にここは運が悪いのか環境のせいなのか、女性が減る一方で、五合目基地や海ほたるに呼び掛けてもこんなに辺鄙で閉鎖的な村に来てくれる人なんかめったにいないから」
今ここにいるのは、いびつな男女比の中で生まれた貴重な若い世代なのだろう。
「表立って争いは無くても、人間関係はギスギスしていくわ」
うんざりして吐き捨てるようにそう言う。
余所者にそんな事を言うのは、相当ストレスに感じているのだろうか。
統制の取れたコミュニティは女性を力ずくで奪い合うことは許さなかったし、共有財産化して管理するような解決策も取らなかった。
女性を皆でシェアして村の存続を図ろうという主張は根強くあるが、想像しただけで吐き気を催す。
ミライに似た面影のある佳乃は、かなり美しい部類に入る。
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