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マザー
中に入るとそこは道場になっており、痩せた高齢の男が正座していた。
ミライたちが歩み寄って来ると立ち上がり、男の方から口を開いた。
「詩織の・・・娘!」
「私の祖父でこの村の村長、要するに吸血鬼狩り一族の現当主よ」
「つまり・・・」
「あなたの従兄ね、ミライ」
そう、その男はミライの母の双子の姉妹の子供だった。
若く見積もっても100歳近いだろう。
同じくらいの年齢のミライは不死のヴァンパイアであるから少女のような肉体を持っているが、普通の人間であるはずのこの従兄は、年齢に似合わぬ精気を感じさせ、身のこなしもしっかりしている。
この男にも闇の眷族の血が入っているのだろうか。
そんなミライの疑念を察したのか、
「鍛錬の賜物でこの歳まで体が動いているが、わたしはただの人間だ、もうそう長くは持たない、この身が朽ちる前に会えてよかった」
そう話す表情は晴れやかで、ミライを見る目は優しい。
「もっと、わたしに敵対する感じかと思ってた」
最初に会った者たちはそれほど友好的でも無かったし、村の住民たちも少し戸惑っているようだった。
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