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佳乃という女も、ミライの母は裏切り者では無いし、ヴァンパイアはもう敵では無いと理解していても、複雑な感情を抱いているように見える。
なのに当主のこの感じは、ちょっと拍子抜けだった。
「一族の分断に繋がった出来事であるしな、わたしらの世代からヴァンパイアや叔母の愚痴を聞かされてきた者たちには複雑な思いもあるだろう・・・それでも、この村にいるのは、エイリアンから人々を守るためだけに剣を振るうと決めた者たちだ」
「そう、それなら話しが早いかもね、わたしはエイリアンと戦う武器を、直せる人がいないかと思ってここに来たの」
ミライは背中に背負っていた細い包みを取り外すと、攻撃の意図が無いことを示すように見せながら紐をほどいた。
母の形見、ミライの愛刀ムラマサが現れる。
「刃を見せたいから、抜くよ」
ミライは静かに、鞘からムラマサを引き抜く。
度重なるエイリアンとの死闘で、その刃は酷く刃こぼれしている。
老人の眉がピクリと動いた。
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