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「だが、これほど刃こぼれしていては、打ち直す必要があるだろう・・・ムラマサを打つとなれば最高の職人を集めて作業しなければならん、心身を清め、最上の鋼を選りすぐる準備だけでも一週間以上はかかるだろう、そこから更に刀身を打ち直し研ぎあげるのは随分と先の話になる、職人たちに最高の仕事をさせねばならんからな」
「えー、そんなにのんびりしてられないよ」
「だろうな、だからこれを、」
老人は道場の壁に掛けられていた刀を取った。
「当代のムラマサを持っていけ」
ミライはそれを受け取り、軽く振った。
「確かにムラマサだ、手になじむ、でも・・・これはお母さんの刀じゃない」
「そうでもないぞ、双子の姉妹は袂を分かつときに、互いの刀を交換したと聞いている…このひと振りは、それを打ち直しながら使われてきたものだ」
ミライはあらためてムラマサをまじまじと眺めた。
「そう・・・わたし、お母さんのこと何も知らないんだね」
「わたしの母伊織と性格も似ていたというからな、裏切り者と言われても、弁解することを良しとせず、多くを語らなかったのだろう」
「ねえ、」
「それを伝えるのも、この歳まで生き永らえた理由かもしれん」
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