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 それでも、各拠点を孤立させずに定期的な物資や人員の行き来を続けてきたことが、日本人という共同体意識を持続させ、自衛隊員たちの士気を保ってきたのだろう。  散発的な戦闘を繰り返しながら車列は首都高速に入る。  廃墟となった東京、小規模な国家に匹敵する経済力を持っていた巨大都市、そのビル群の間を走っていく。  ナナの衛星の目も、ゼロ号機のセンサーも、そしてミライのヴァンパイアの感覚も、この大都市に無数に蠢くエイリアンを捉えている。  元々エイリアンは都市部に集中的に発生して、人類側の国家の機能を崩壊させた。  それでもモスクワや北京は首都に立て籠もって抵抗するインフラがあったが、戦争に備えること自体に国民が過剰なアレルギーを示す時代が長かった日本にはそれが無かった。  中国、ロシアに対抗しアメリカ合衆国に次ぐ海軍力を持つに至るほど、2000年代には国防への意識も高まってはいたが、首都を軍事要塞化するのは一朝一夕にできることではない。  だから、侵略を受けて早々に日本政府は東京から撤退した。  世界的な大都市が、そのままエイリアンの植民地になってしまった稀有な例だった。
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