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天動説の世界、白夜の村
「ミライ、やっぱりやめておこうよ、絶対怒られるよ」
不安そうに呼びかける少女に、ミライは何も恐れていないようにニッコリ笑った。
「大人に何か言われたら、わたしが無理言って連れて来たことにするから大丈夫だよ、アンナ」
ミライは滅多に人前で笑顔を見せない。
村の中でも、学校の中でも、周囲から浮いているせいもあるが、明らかに普通と違う尖った犬歯にコンプレックスを持っているからという理由の方が大きい。
歯並びもよくて綺麗な歯をしているのだが、犬歯だけが牙のように尖っていて、口を開けると悪魔のように見えてしまう。
だからいつも口元を手で隠すのが習慣になっているし、基本的に笑わないようにしている。
こんな笑顔を見せてしまうのは、親友のアンナの前だけだ。
アンナは自分に向けられたミライの笑顔を見て陶然としていた。
同性のアンナの目から見ても、うっとりして我を忘れてしまうほどミライは美しい少女だった。
ミライは強引だし、大人の言うことを聞かない自由過ぎる行動にしょっちゅう自分を巻き込むけど、この笑顔で見つめられたら断れない。
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