敗北者という生き方

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 a4a557de-e964-47fc-8341-da54d0c91fe8    真っ二つに切断された堕天使が血の海に沈む。  傷だらけになりながら、最後に立っていたのはミライだった。  切断された腕を、肘に押し当てる。  しばらくすると、右腕は動きを取り戻した。  恐ろしい敵だったと思う。  辛うじて勝ったが、もし相手がナナの様な、戦闘状況を三次元的に超高速演算処理して敵の攻撃の軌道予測をする能力を持っていたら、この捨て身の攻撃も致命傷にならなかった可能性がある。  それにしても、敵とはいえエイリアン以外の者を斬り捨てるのは、慣れることの無い後味の悪さが付き纏う。  勝ったけど、こんなものは勝利じゃない!  この堕天使だって、ナナと共に栄光ある勝利を得る道もあったはずだ!  ミライにはまだ、フルカスの敗北感の根深さと、彼らが目指す勝利の意味を理解することは出来なかった。  いや、漠然と、彼らを突き動かすものの重く深い闇を感じていたのかもしれない。  だから、目に見える単純な正義に縋りたくなる。  自分の本能に正直になりたくなる。  ナナ!  早くナナを組み敷いて虐めたい!  震えながら泣く美しい首に牙を突き立てて痛みに悶えさせてから、快楽で支配したい!
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