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1.始まり
雨が降っている、一粒一粒が何かに落ちて様々な音をたてる。
その中で、彼、天木 真倉は座っていた。
下から上まで水浸しの身体、手は泥に塗れ、爪の中すら泥で汚れている。
そして周りには一つ二つではなく、沢山の穴が掘られており、天木の周囲を囲んでいた。
天木の身体はとても、幼く小さい。
だから、大人なんかの大きい人達よりも囲みやすいのはもちろんなのだが、
でも彼は小学六年生、小さな手のシャベルで一生懸命掘ったとしたら、相当な労力だ。
周りに大人なんていない、指だって痛くなってくる、だから一日やそこらで掘るのは到底無理。
ならば、周りの穴はきっと何日も何日も掘ってきた成果だろう。
小さな子供の気まぐれ、遊び、おかしい、そう言って大人は天木を笑ったり、悲観したりするかもしれない。
でも、天木にとっては大切な事だった。
大人とは違う、子供は沢山の初めてを経験して成長する。
そして、その初めてが当たり前になって大人になり、そうして子供を授かり、大人としての自分を見せることになる。
将来の天木 真倉も、多分そうなる。
何をするのも、子にとっての良かれと想って。
でも、思い返して欲しい。
忘れているものがあること、小さい頃に、あったかもしれない、不思議な出来事を。
これは、天木 真倉の身に起こった物語の断片である。
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