6人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
ガラ、ガラ、ガラン、と乱暴に鳴らされたドアベル。
興奮し、肩を揺らしながら入ってきた男。
額の汗をぬぐうこともせず、2歩3歩とよろめきながら進む。
その姿、一見するとギャングに追われた哀れな青年。
いや、哀れなもんか。
追い出したくても、しつこく頭の中を支配している男だ。
奴は近づくなり呼吸を乱したまま
「なあ、お、覚えてるか?」
と自信なさそうに口にした。
俺はちょっと首をかしげて「どちら様?」と言ってやった。
「だよな……」と涙目になっている奴を見下げ、片口上げてこう付け加えた。
「あほ。待ちくたびれたっつーの」
全ては『ビタースイート・サンバ』の魔法かもな。
最初のコメントを投稿しよう!