午前1時

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 そのうち慣れてくると、男と女がキスしたり抱き合ったりする話だな、と訳知り顔で頷いてみたりして。  深夜ラジオとは、エスカレーターで大人の階段を上るようなーーファストパスだったのだ。  ラジオを聴いた翌日は、ナオと番組内容について語り合う。  それは、アニメかゲームくらいしか盛り上がれないクラスメイトに対する、僕の優越感を挑発していた。  番組内で披露される小ネタ、選曲されるちょっとコアな音楽、タレントの裏話、全てが刺激的だった。  言うなれば、僕たちはアウトローだった。 『アウトロー』――この単語の響きは、僕を有頂天にさせるスパイスだった。  そうしてどんどん深夜ラジオに夢中になるにつれ、週に1度の夜ふかしが2度になり、3度となる頃には、授業中にしょっちゅう居眠りをして叱られるようになっていた。  放任主義を決め込んでいた母親も、さすがに僕の変化に気づいた。  ある日、いつものようにラジオを聴きながら含み笑いを漏らしていると、突然母親が部屋に入ってきた。
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