午前1時

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「なにしてるの?」 「何って……、宿題だけど?」 「こんな夜中に?」 「明日までの提出ってこと、忘れててさ」 「……、全然進んでないじゃない」  机の上に広げてある漢字ドリルに目を向けると、まだ一文字も書いていなかった。 「何聴いてるの?」  母親はラジオからイヤホンのコードを引き抜いた。  あ、マズイっ、と思った時すでに遅し。よりによってこの日のパーソナリティは子供を持つ親から大ひんしゅくを買っている、いわゆる『お下劣』として有名なお笑いタレントだった。  はかったようにラジオから流れでる下ネタの数々……。 「あんた、こんなの聞いてんの?」  母親の顔が歪みに歪んだ。そして震えるこぶしを宙に掲げて、僕の脳天に直撃させた後、 「ラジオは没収するっ!」  寝る子も叩き起こすほどの大音量で、ヒステリックな声が天井を震わせた。
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