午前1時

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 翌朝はいつもよりも早い時間に叩き起こされた。しかも、ねちねちくどくど、嫌味のオンパレードだ。  朝ご飯を食べている間も『いつも遅くまで勉強してんのかと思ったのに、すっかり騙されたわ』だの『あんた、〇〇(確か、モーテルだか、ラブホだかの単語だった)理解できてんの?』だの、まとわりつく蝿のごとくうるさくてかなわない。    僕は母親からの呼びかけや質問には一切応えず、もくもくとトーストを咀嚼し、牛乳を飲み、ご馳走さまさえ言わずに席を立った。  果たして「ご馳走さまは!?」と、いきり立つ声に追いかけられ、逃げるようにランドセルを手に家を飛び出した。  登校すると、すぐにナオに声をかけた。いつもなら昨夜の番組内容で盛り上がるはずが、今日はそれどころではない。緊急事態が発生したのだ。 「それで、いまラジオはどこにあるんだよ?」 「わかんない。隠してるみたい」 「返してもらえる予定は?」 「ない。あの調子じゃ、一生無理だよ」  一番気に入っていたのは昨夜のお笑いタレントの番組だったから、最悪一週間は我慢できる。が、ダメだと言われたら、何がなんでも聴きたくなるのが人間というもの。  明日の番組は、普段なら眠い時はまあ聴かなくてもいいか程度のはずなのに、うずうずするほど聴きたくなってきた。
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