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「はぁぁ、親ってホント面倒くさいよな。家出しようかなぁ」
僕は机につっぷし、本気でため息を吐いた。
自分が大切にしていたものを、土足で踏み荒らされた気分だった。楽しみという楽しみを根こそぎ理不尽な力でねじ伏せられたような……。
「もう死んでやろうかな……」
抵抗する力を持たない哀れな自分。僕が死んだことで、母さんは嘆き悲しみ後悔にうちひしがれたらいい。と、そんなことを呪いのように唱えていた。
たかがラジオごときに、とあなたは笑うだろうか。
10才の僕にとっては『人生お先真っ暗』の出来事だったのだ。
例えるなら、愛しい人と引き裂かれた『悲劇のヒロイン』とでも言おうか。
僕の呪詛を黙って聞いていたナオだったが、いつもは少し眠そうな瞳をギラっと光らせてこう言った。
「そんなら、来週の放送はウチで聴くか?
――よし、とりあえず1週間いい子でいろよ。そしたら親の目も甘くなる。問題はどうやって家を抜け出すかだな……。なあ、お前んちってさぁ……」
つまりは、自分のラジオで聴けないなら、オレんちのラジオで聴けばいいと、ナオはそんな提案をしてきたのだ。
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