小説の中の世界

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「え……?」  カナは、思わず聞き返してしまった。 「あなたは、小説の中の世界にいたのです」 「……どういうことですか?」 「聞けば分かります」  少女は続けた。  その後少女が言ったことは、次のようなことだった。  小説の中ということは、当然作者がいる。そして、当然作者はその世界を自由自在に設定することもできる。しかし、少女は作者が知らない別の世界の人間であり、自由自在に小説の世界に入り込むことができる。 「作者があなたをここまで苦しめたのです」  少女は言った。 「……うそ……でしょ……」 「作者はあなたがどうなっても良いと考えている。だからあなたをあそこまで不幸な人物にした。人間なのにどうしてそのようなことができるのしょうか」  カナも少しずつ話を理解してきた。 「……作者は私の人生を、なんだと思っているのでしょうか」  カナは自分の人生をいいように操る作者を許せなかった。 「しかし、私にはあなたのためにできることがあります」 「……できること?」 「はい」  そして、少女は少し間を空けて言った。 「私は、人の人生を入れ換えることができるのです」  カナの喉が、ゴクリと鳴った。
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