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ラインの着信が鳴った。
「ヒマ?」
プレビューを確認したサワは、苦笑いしつつ既読をつけない。
「ねえ、サワちゃん。いま次のゼミの待ち時間なんだ。僕とお話しようよ。」
ヒマなのは発信者の方で、一緒に時間を潰してくれる相手が欲しいらしい。
「君がどうしているか気になって。無視しないでよ、心配になるじゃん。」
「私は、忙しい。」
サワは短く返す。
返信するのは、単なる癖だ。それが社会人としての常識だと、会社で教え込まれたから。
断りのラインのつもりだったが、相手は続けた。
「サワちゃんの観たがってた映画が週末に上映されるけど、僕と観に行かない?もうすぐクリスマスだから、映画終わったらプレゼントとか見たいな。新しいスニーカーがマジでカッコイイんだ。」
発信者は、ショウ。ナンパで声をかけられた。
やたらにグイグイくる彼と、軽めのデートを数回した。
でも、深く付き合う気はない。クリスマスのプレゼントとかは、全然考えていなかった。
サワは、返答に迷う。
自分は、結婚を早くしたいから、真面目なお付き合いがしたい。
ショウはカッコ良くて好意を寄せてくれてるけど、彼はまだ学生だ。遊ぶには楽しいのだけど、ショウは子供っぽすぎる。将来のこととか考えているようには見えない。
「カエルの王子様とキスするプリンセス映画を、観たいって言ってたでしょう?面白そうだから俺も観たいけど、男が1人だと恥ずかしいから一緒に付き合ってよ。」
それはそうだ。サワは思い直した。
映画は1人で観るより、誰かと一緒の方が思い出になる。
それに、「プリンセスと魔法のキス」が観たいと、前のデートで何気なく口にしたのをショウが覚えてくれていてくれたのは嬉しかった。
「いいよ」
サワは、返信した。
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