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「どうしたの?映画がつまらなかった?」
映画の上映が終わり、ショウはサワの顔を覗き込む。サワは、心ここに在らずだった。
「気晴らしに、ショップにシューズを見にいこうよ。」
エスカレーターに乗るショウの足取りは軽い。サワは、つられて後をついてゆく。
映画は面白かった。デートは楽しい。
なのに、困ったことに職場でのゴタゴタを思い出して、ついイライラしてしまった。
思えば入社したての頃、サワの頭の中は、お給料のことでいっぱいだった。
父親や祖母や母の面影のある実家を出て、自立したい。でも、そのためのお金を今の給料からどうやって貯金しよう、と言った具合に。
でも、あれから数年が経って、今のサワにはわかる。
当時、自分の頭の中を大きく占めていた問題は、さざ波でしかなかった、と。
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