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高校で、あずさに出会った。彼女は自分と同じように家族に問題を抱えたクラスメイトだ。だけど、そんな状況にあっても彼女はサワや他人を気遣えるのだから、サワには驚きだった。
2人は、友達になった。サワにとって、あずさは友達以上の存在だ。
ふざけていても甘えていても、サワはどこかであずさのことを尊敬している。
程なくしてサワは、今までの周囲への反抗が自分にとって全く無意味だったことに気づく。立ち直ったきっかけは、それまで辛抱強く世話を焼いてくれていた祖母が放った一言だ。
「あんたも、母親みたいに男に走ったら、家に帰って来んくなるんかねぇ。」
可愛がっていた孫が手に負えなくなって、思わず本音が出たらしい。
自分にずっと甘かった祖母にこんな言われ方をされて、ショックだった。祖母が母親を引き合いにして怒ったのは、後にも先にもこの一度きりである。
この時のことを、サワは今でも自分の心に刻んでいる。
(自分は、父を裏切り自分を捨てた母親のようにはならない。与えられた幸せを見つめて、その中で満足できる人になる)と。
祖母の言葉をきっかけとした自分へ戒めは、きっと将来ためになる。だが同時に、祖母へのわだかまりが心の奥底で拭いきれずに残ったのだった。
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