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卒業式までの時間は、手から水がこぼれ落ちるようにあっという間だった。
卒業後のお互いの行き来をかたく約束した、私とあずさ。
だが、仕事と勉学に忙しい2人の仲は、疎遠になりつつある。
「お給料をもらっている分、遊びを優先するわけにいかない。」
慣れない仕事に追われる日々は、慌しく過ぎる。
自由になるお金が手に入るのは、最高だった。意外とあっさりと大人になった気がして、拍子抜けする。
でも、どこか引っかかる。まだ、自由になった気がしない。
職場には、実家から通っていた。考えてみたら、なんだかまだ学生生活を引きずっているみたい。
だからと言って、今の給料では自立できそうにないけど。
家を出るのに必要になるお金を、計算してみた。
家賃に光熱費にネット代。それだけに収まらない。働き始めて知ったのは、税金と年金と保険料がびっくりするくらい引かれるのだ。
試しに家計簿をつけてみたが、一人暮らしなんてとても無理だと悟った。
サワは、思い起こす。夢がいっぱいだった、新社会人の頃は、周りからちやほやされて、楽しかった。
それなりにモテてたけど、誰ともお付き合いするには至っていない。とにかく、仕事を覚えるのに必死だった。
働き続けるのは楽じゃない。仕事がうまくいかずに落ち込んで、周りの年長者に気を遣っている間に、日々がどんどん過ぎて行く。
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