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「篠崎くん、また学校来てないね。」
「ね。」
彼は今日、学校を休んだらしい。
ちなみに、僕も休む。
高校の出席日数を稼ぐために、僕は1時間だけ授業を受けて下校することがよくあったし、計算しながらやれば最低限の単位数で卒業することも可能だ。
今日休んだ「彼」には、その事を教えてあげる必要がありそうだった。
「あっ。瞬くん帰るんだ。またバレエ?」
「そうだよ。ノートありがとう。また見せてね。」
「う、うん。またしっかりまとめるから。」
「迷惑だったら、他の人に頼むけど、」
「ううん!別に、大変とかじゃないから。あたしノートまとめるの好きだし。全然いいよ。」
「ありがとう。助かる。じゃあ。」
「じゃあね…。」
彼女の好意を利用している。
その点では、母も、父も、僕も、一緒である。
それが自分の大切にしている何かを守るためだと言ったとして、あの名前も覚えていないノートを書いてくれる子は、そんな理由で許してくれるだろうか?
バーレッスンが終わると、彼はそれだけで十分に汗に濡れていた。
「篠崎くん。で、合ってる?」
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