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真っ黒な短髪から、刀みたいに強い眼光を持つ目が僕を見つけた。
僕はその強さに気圧されながら、「学校さ、」と話を続ける。
「せっかくあと1年で卒業できるんだから、留年しないためにも……あの、…出席日数、稼いどいたほうがいいよ」
「…知ってる。今は転校してきたばかりで、まだその余裕が無いから」
「そ、うだよね。前の学校でもきっとそうしてたんだろうしね」
「違う。前住んでたの、すごい田舎で。教室に行くまで片道30分かかった。から、そんな簡単に学校と行き来できない」
「そーなんだ、うん、そっか。今は随分と便利になったね」
「ああ。そうだな。でも、田舎が恋しい」
この篠崎という男にも故郷を恋しく思う心があるのかと軽く驚く。それ程篠崎には、目的のためならなんでもしそうな、殺し屋みたいな雰囲気があった。練習着は真っ黒だし、ソックスに至っても刺繍ひとつない完璧な黒だ。
「先に言うが、君はここでいちばん上手い」
篠崎が割と普通の大きさの声で言った。
「ちょ、まて。それは僕の耳元で言ってくれよ」
「本当の事だろ」
「ちょっと黙れ篠崎くん」
「本当に耳元で喋っていいのか」
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