君とバレエと世界と

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「あら。なんか今日は嬉しそうね」 母は機敏に僕の感情を感じ取ったらしい。 「珍しいじゃない。やっぱり、噂の彼のことでしょ?」 「……君の踊りが…」 そこで僕の口は止まった。 篠崎くんの「好きだ」を、僕のもののままにしておきたかったから。 「すごくいいって、言われたよ」 「あらまー良かったじゃない!その子、上手いんでしょ?なおさら嬉しいねぇー」 「全身真っ黒なんだよ。練習着も、ソックスも黒くてさ。忍者ってよりかは、殺し屋みたいに目も鋭いんだけど、女の子と踊る時は全然違う顔してて……」 僕はハッとした。喋りすぎた僕を、母がにやにやしながら見ている。 「相当入れ込んでるわね」 「…うるさい。食べる」 僕は今日も、出来たてみたいに温まっている夕食を食べた。 食卓に父親はいなかったけど、それでいい。それがいい。 ロールキャベツは相変わらず美味しかった。 ーーー 「明日から冬休みに入りますが」 続いたのは進路や就職の話。僕や篠崎くんには、ある意味縁のない話だ。 「瞬くんは大学とか行かないんだよね?」 「うん。ロシアに行くから」
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