プロローグ

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プロローグ

『気象海洋研究機構の鮫島(さめじま) 冬慈(とうじ)です。、どうぞよろしくお願いします。』  ……もしあなたが、2年間想い続けていた相手と偶然再会したとして。 『ほら、名刺交換!』  それがまさかの社会人1年目の名刺交換デビューの日で、上司に急かされながら名刺を取り出す瞬間だったとして。 「あ、、あの、み、三國商船の渦波(うずなみ)(かい)です。よろしくお願い致します。」 『頂戴します。』  相手が、やっとかっと名刺を渡した自分にも、バラバラと落としてしまった名刺にも、一切興味を示さなかったとして。 『すみません、まだこの子新人で』 『気にしませんよ』  後ろ手で振られた手が拒絶を示していたとして。  ………冷静でいられると思うか?  俺は、無理だった。  ただひたすらに混乱する頭を、乾く喉を、滝のように流れる汗を気づかれないように息をひそめながら、1時間の拷問に耐えるので精一杯だった。  渦波(うずなみ) (かい)、23歳。  あの夏の激しい恋と別れから、2年弱が経っていた。
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