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誰にも迷惑をかけず、誰も知らないところで僕は消えよう。養子を解消したのも、本当は両親に迷惑をかけたくなかったからだ。
だけど、僕は最後に思ってしまった。もう一度、兄に会いたいと・・・。
一度そう思ったら、思いが止まらなくなった。
会いたい。
触れたい。
兄の香りに包まれたい。
そして、どうせ消えるのだからという思いが、僕をより大胆にさせた。
そんなに簡単に成功するとは思っていなかった。
あくまで計画は計画。
一つでも狂えば、失敗するはずだった。
兄の友人が飲み会を開いてくれなかったら。
兄が酔わなかったら。
誰かが兄を送ってきたら。
僕の計画など、すぐに失敗するはずだった。
なのにあの夜は怖いくらいにことが進み、そして・・・。
それでもお腹に子が宿らなければ当初の予定通り、この世から消えようと思っていたのだ。
だけど・・・。
「小さな騎士は生まれる前から君を守っていたんだね」
嗚咽を上げて泣きじゃくる僕をぎゅっと抱き締め、アダムは言った。
「君のしたことは確かにいけないことだろう。だけど、君が今ここにいるためには必要な事だった。そして僕は、君に会えたことに感謝している。ユイト、生きていてくれてありがとう」
今日会ったばかりなのに、アダムの腕の中は心地よく、香りは僕を落ち着かせてくれる。
「許されない罪などない。もし君のお兄さんが君に怒り恨んでいたとしても、誠心誠意謝ればいい。許してくれないのなら、許してくれるまで頭を下げ続けよう。その時は僕も一緒に謝るよ」
その優しい言葉に、僕の心はぎゅっとする。
「アダム。そう言ってくれてうれしいけど僕は・・・」
アダムをそういう風には愛せない。そう続けようとした口を優しく手で塞がれた。
「分かっているよ。だけど誰かを思う気持ちはその人の自由だ。君がお兄さんを思うように、僕は君を思う。番になどならなくていい。肌を重ねなくても、こうして僕の腕の中にいてくれたらそれでいい。これから先の人生のパートナーとして、僕のそばにいて欲しい」
それは深い関係を結ばないってこと?
アダムはそれでいいの?
「今までだってベッドを共にする相手はいなかった。そういう意味では変わらないんだから、そんなことは気にしなくていい」
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