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瑛翔がうれしそうにボタンを押すと、直ぐにドアが開いた。その瞬間流れ出てくる香り、アルファだ。
「ユイト?待っていたよ。さあ入って」
出てきたのは背の高い金髪の男性だった。目が深い青だ。アルファゆえに整った容姿で、けれど特有の威圧感はない。
「お招きありがとうございます」
そう言って中に入ると、すぐ降りると思った瑛翔は僕の胸の辺りを握りしめて降りなかった。
緊張してるのかな?
ちがう、警戒してるんだ。
前のボスの時はとても懐いていて、こう言ってはなんだけどおじいちゃんと孫のようだった。なのにアダムに対しては少し違う。
どうしたんだろうと思いながらもそのまま瑛翔を抱っこして中に進むと、既にルームサービスが来ていた。
「ちょうど今来たところなんだ。さ、座って。冷めないうちに食べよう」
そう言って席を勧めてくれるのに、瑛翔が降りない。そんな瑛翔にアダムは苦笑いした。
「やれやれ、すっかり小さい騎士に警戒されてしまったね。君への下心がバレてしまったようだ」
茶目っ気たっぷりにそういうけれど、僕はその言葉にびっくり。
え?下心?
「そんな顔をしなくても襲ったりしないよ。さあ、お腹空いてるだろう?」
そう言われて僕は仕方なく瑛翔を抱っこしたまま椅子に座ったけど、瑛翔はまだ僕の首にしがみついたままだ。
「子供の好きそうなものを適当に選んでみたんだけど、騎士くんにはお気に召さなかったかな?」
いつまでも僕にしがみついて料理を見もしない瑛翔に怒ることも無く、笑って言ってくれるアダム。僕は彼に好印象を持った。
「瑛翔、見てごらん。瑛翔の好きな物ばかりだよ。僕お腹空いちゃった。瑛翔はどう?まだ空かないの?」
テーブルの上には本当に子供が好きそうなものばかり乗っている。
ピザにパスタにグラタン、ハンバーグ。チーズバーガーとポテトもある。ドリンクもオレンジとりんご、そしてミルクだ。
みんな瑛翔の好きな物。
僕はいつも子供と同じものを食べているから大丈夫だけど、アダムはこういうの食べるのかな?
僕たちに合わせて無理してないかな?
そんな心配をしていると、いい匂いに瑛翔のお腹がぐうと鳴った。それに気づいたアダムはわざと大きな声を出す。
「このハンバーグとてもジューシーでおいしそうだね。それにパスタ。トマトソースがキレイだ。ピザもチーズがたっぷりで、早く食べないともったいないね」
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