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その言葉の一つ一つに反応する瑛翔がかわいい。そして最後のピザでついにテーブルを振り返った。
ピザは瑛翔の一番好きなものだ。
「どうする?チーズが固まらないうちに食べないとおいしくなくなっちゃうね」
僕がダメ押しをしても、瑛翔はウーと唸ってまだ我慢する。
やれやれ、頑固だな。
僕は瑛翔の腰を持ってくるりとテーブルに向かせた。
「ほら、ここでいいからいただこう。お腹空いてるでしょ?」
もう膝の上で食べさせることは無かったけど、今日は特別にいいよ。暗にそう言ってあげると、そのままちょこんと僕の膝の上に座ったままやっとテーブルの上を見た。その目が輝いている。
ごちそうだもんね。
キラキラした目を僕に向けるので、いいよと頷いてあげる。すると瑛翔は僕が何も言わなくても、アダムにお礼を言った。
「ありがとうございます。いただきます」
よく出来ましたと言うように頭を撫でてあげると、僕は取り皿にピザを取ってあげた。それにもう一度『いただきます』と言って食べ始める。
そんな瑛翔からアダムに視線を移すと、アダムは柔らかい笑みを浮かべながら瑛翔を見ていた。その優しい眼差しに、僕の鼓動がほんの少し早くなった。
「すみません。お騒がせして・・・」
「いやいや。こんな小さいのにちゃんと君を守ろうとしているのが微笑ましい。よっぽど君が好きなんだね」
別段怒る風もなく、アダムも料理をとりわけ始めた。自分の分を取ったのかと思ったら、その皿を僕の前に置く。
「すみません、気が付かなくて」
僕は慌てて謝った。こういうのは僕がしなければならなかったのに。
「いいんだよ。今はプライベートだ。私がホストなんだから当然のことをしただけだよ」
たしかに今は仕事じゃないけど・・・。
「気にしないで。さあ、食べよう」
自分の分も取り分けたアダムに促され、僕もいただきますと言って食べ始めた。
「食べながらでいいから。改めて、僕はアダム・ジョンソンだ。これから君にお世話になることになるが、よろしくお願いする」
「僕はユイト・サワタリです。まだ二年目なのでご迷惑をかけるかもしれませんが、ご期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いします」
そんなやり取りを見ていた瑛翔も、口の中を空にしてから自己紹介をした。
「僕はエイト・サワタリです。よろしくお願いします」
まだ警戒しているのか、笑顔はなかったけどちゃんと挨拶できた。
「僕はアダムだよ、エイト。これからユイトと仕事をするんだ。僕はエイトとも仲良くなりたいんだけど、アダムって呼んでくれるかな?」
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