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目線を合わせて言ってくれたアダムを瑛翔はじっと見て、そして僕を見上げた。
「確かに僕は君の大事なユイトが好きで、出来れば君のお父さんになりたいと思ってるんだけど、絶対にユイトに嫌なことをしないし、ユイトを泣かせたりしないよ」
その言葉に僕がびっくりする。さっきも似たようなことを言ってたけど、僕たち今初めて会いましたよね?て、そもそもそんな話、子供にするものじゃないです。
「ゆいくん泣かさない?」
なのに瑛翔は真剣な顔で聞いた。
「泣かさないよ」
アダムもちゃんと真剣に返す。
じっとアダムを見てる瑛翔は何かを考えてるようだ。
「ゆいくん、時々夜泣いてるの。もう泣かないようになる?」
僕はびっくりして瑛翔を見た。
瑛翔、知ってた・・・?
時々無性に兄が恋しくなる時がある。
憎まれてるかもしれない。
恨まれてるかもしれない。
だけど、もう二度と会えないだろう兄への思いが、断ち切るどころか溢れ出してしまうのだ。
会いたい。
触れたい。
あの香りに包まれたい。
そんな夜は胸が締め付けられるくらい痛くて、辛くて、悲しくて・・・。涙を堪えられないのだ。
瑛翔は寝ていると思っていたのに・・・。
「そうなるようにがんばるよ。ユイトが泣かずに、いつも笑っていられるように・・・。僕はユイトを幸せにしたい。もちろんエイトもね」
真剣な瑛翔に真剣に答え、アダムは最後にふわりと笑った。
じっと見ていた瑛翔は不意に笑った。
「わかった。えいともアダムと仲良くなりたい」
いつものにこにこ笑顔の瑛翔に戻った。
「ありがとう、エイト。じゃあ僕達は今から友達だね」
アダムもうれしそうに笑っている。
「うん!」
にこにこ笑ってそう返事をすると、会話は終わりだと言わんばかりに瑛翔は再びピザを食べ始めた。
「いい子だね」
優しく目を細めて瑛翔を見るアダムに、今の会話を訊こうと口を開きかけたけれど、その前にアダムに言われてしまった。
「さあ、食事を再開しよう。冷めてしまうとおいしくなくなってしまうからね」
確かに冷める前に食べた方が良いけれど・・・。
僕は訊きたいことをいっぱい抱えながらも訊くことが出来ず、とりあえず料理を片付けることにした。
それからの瑛翔はにこにこ全開で、アダムもうれしそうに瑛翔と話をしている。小さい子供との会話は疲れるだろうに、根気よく聞いて、わかりやすく答えていた。
最初あんなに警戒していたのに、今ではすっかりアダムにベッタリで今も仲良く子供向けのアニメを見ている。
なんだか僕だけ除け者だ。
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