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あれ?僕は今日なんでここに来たんだっけ?
そう拗ねてしまってもおかしくないくらい、アダムと瑛翔は仲良くなった。そんなアダムが僕を振り返った。見るとアダムに寄りかかりながら瑛翔が寝てしまっている。
「すっかりあなたに懐いてしまったみたいですね」
そう言ってそろそろお暇しようと瑛翔の方に行ったら、僕よりも先に瑛翔を抱き上げ、アダムのベッドに寝かせてしまった。
「こんなかわいい騎士に懐いてもらって、僕もうれしいよ」
そう言って戻ってきたアダムは僕を促すと、さっきまで瑛翔と座っていたソファに一緒に座った。けれど、僕達の間にはちゃんと間が空いている。
「あの・・・さっき瑛翔に言ったことは・・・」
その紳士的なアダムに、僕は思い切って訊いてみることにした。僕達は今日初めて会ったのに、あれじゃあまるで愛の告白のようだったから。
「そのまんまだよ。僕は真剣に君が好きだ。出来ればエイトの父親になりたいと思っている」
距離を空けながらも、僕を見るアダムは真剣だった。
「でも、僕達は今日初めてお会いしましたよね?」
こんなに直ぐにそんな気持ちになるの?
「いつ会ったかは関係ないよ。一目惚れだからね」
一目惚れ、て・・・。
「うそ。本当は半年君に片思いをしている。でも一目惚れは本当だよ」
真剣な眼差しを一転させ、アダムは茶目っ気たっぷりに目を細めた。
半年?
「半年前の本社のクリスマスパーティに、たまたま用があって僕もいたんだよ。そこで君を見かけた。みんながお酒を飲み、ほろ酔い気分で絡んでくるのを微笑みながら華麗に交わす姿がとてもきれいで、僕は君から目が離せなかった。なのにちょっと他の人に話しかけられた隙に君を見失ってしまってね。必死に探したら、君はちょうどエレベーターに乗るところだった。降りた階数を確認して慌てて追いかけると、君は駆けて来た子供を抱き上げ、それはうれしそうに笑ったんだ。僕はその笑顔に、すっかり魅了されしまったんだよ」
半年前のパーティ。
確かに僕は瑛翔を迎えに行くためにお酒も飲まずに途中で帰ったけれど、その時に見られていたなんて全然知らなかった。
「帰っていく君の後ろ姿に何度も声をかけようとしたんだけど、子供を抱えた君はきっと警戒するだろうと思って我慢したんだ。その後君のことを調べて、日本人であること、秘書課に所属していること、そして若いけどとても優秀であることを知ったんだ」
最後のはちょっと盛りすぎだ。
アルファの社員の方がよっぽど優秀だから。
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