背徳のオメガ 2

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この会社にも同じビル内に託児所があり、勤務中子供を預けることが出来る。またオメガ社員の場合、発情期にはそこに預けることも出来るのだ。僕はその制度を活用し、瑛翔をここに預けている。また、この会社は残業も休日出勤もない。そんなことをするのは効率よく仕事がこなせなかったせいであり、日本と違って残業は無能がすることと思われているからだ。 瑛翔を第一に考えている僕にとって、理想的な会社だった。 秘書課のある階に止まると僕はエレベーターをおり、職場へと向かった。すると、中がざわついている。 何かと思ったその時、同僚が声をかけてきた。 「おはよう、ユイ。どうやら君は転勤のようだ」 入社してから僕の生活は子供中心で、あまり同僚とは親しくなれなかったけど、その中でもよく話をしてくれた同僚が教えてくれた。 転勤? 入社2年目の僕がもう転勤? 僕は何か失敗をしてしまったのか? あまりに早い転勤。僕の頭に左遷の文字が浮かんだ。 急いでデスクに向かうと辞令と書かれた書類が置いてある。そこには、提携する日本企業への転勤の旨が書かれていた。 まさか日本だなんて・・・! 日本を逃げ出してから6年。その年数は長いのか短いのか・・・。 僕は勝手にこの地で骨を埋める気でいた。もう二度と日本に帰ることは無いと思っていたのに・・・。 日本に会社を持つ企業に就職したのは失敗だったのか・・・? けれどこの会社は僕の希望にとても沿っていた。瑛翔のことを考えても、これ以上にいい所はない。 だけど、日本だなんて・・・。 数年前に買収した日本の企業の成績が不信で、近々テコ入れが行われるという話は聞いていた。そのためにアメリカからかなりの数の社員が投入されるという。おそらくその社員のひとりに僕も選ばれたのだ。 この話を断ったら、僕はクビだろうか・・・? 日本に行くくらいなら、いっそこの会社を辞めて新しく仕事を見つけようか。 一瞬そんな考えが頭に浮かんだが、それは出来なかった。なぜなら両親にお金を返したために、今僕には貯金がなかったからだ。 またすぐに貯められると思っていたのに、浅はかだったか・・・? 瑛翔の顔が浮かぶ。 あの子には絶対に不自由な思いはさせたくない。 僕は書類をめくって転勤の条件を見た。 すると、この転勤が決して左遷まがいなものではないことが分かる。なぜなら、今よりも待遇がいいのだ。
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