背徳のオメガ 2

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住まいは希望のところの半分が補助になり、社内にある託児所も今と変わらぬ条件で使える。 さらに今と同じように残業も休日出勤もない。 日本の企業なのに? 日本の会社に託児所がある方が珍しい。いくら買収した企業だからといって、社名も体制もそのままだったはず。なのに・・・。 その疑問はすぐに解けた。 その後出社してきた部長(ボス)から直々に話を聞いたからだ。 日本の企業は今年度最大の赤字を叩いたのだ。このままではアメリカの本社も共倒れになりかねないと、大規模に改革することになった。 まず社長を解任し、アメリカから派遣すること。そして本社の意向に沿わない社員を解雇し、当面はこちらから社員を出向させながら、有能な社員の確保を図るということらしい。 社名はそのままだが、ほとんど本社と同じ会社に変えていくようだ。 その一環として社内の託児所。 アメリカ本社では女性もオメガも大事な有能社員とみなし、子育てを理由に降格、ましてや解雇など有り得ないのだ。そのため必要な託児所を先ずは第一に作ったらしい。そして残業と休日出勤の廃止。これも本社の考えに沿わないからだ。ダラダラ仕事をしたところで効率は上がらない。むしろ疲れだけが溜まって社員が疲弊するだけだ。 そして僕の待遇だけれども、僕は新しく派遣される社長の秘書として日本に行くことになったようだ。 良く考えれば当たり前だった。 右も左も分からないアメリカ人社長が現地で日本人の秘書をつけられたところで色々と困るだろう。ましてや今回の大規模改革は、おそらく現地では歓迎されていない。言わば、敵地に乗り込むのに、向こうが用意した秘書なんて何をされるか・・・。かと言ってアメリカから連れていくにも日本語に長けていて、日本をよく知る人物でなくてはならない・・・となると必然的に僕しかいなかった。他の課なら日本人もたくさんいるけど、秘書課には僕だけだったから。 報酬を見ると、なんと25%アップになっている。 僕はしばらく考えた。 いくら僕しかいないとはいえ、僕はまだ2年目の、ほとんど新入社員と変わらぬ存在だ。そんな僕にこの待遇は良すぎるのではないか? なにか裏があるのか、と考えていると、ボスが笑いながらフォローしてくれた。 「そんな難しい顔をしなくてもすましてOKを出せばいいんだ。年齢なんて関係ない。君はとても優秀だ。その報酬でも足りないくらいだよ。一年君に付いてもらっていた私が言うのだから間違いない」
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