背徳のオメガ 2

5/18
293人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
転勤が決まってしまうと、あとは怒涛のようだった。 通常勤務に加えて引き継ぎをし、引越しの準備をしつつ向こうでの住まいをネットで探した。 気をつけなければならないのは兄とのニアミス。 幸い兄の会社と今度の転勤先は決して近い距離ではない。日々の行動に気をつけてさえいれば、会うことはないはずだ。 兄は今、どこに住んでいるのだろう・・・。 独身時代のマンションは知っている。けれど、結婚後の新居については聞いていなかった。 だけど、要は僕がフラフラしなければ良いことだ。 僕は会社から徒歩圏内のマンションを探した。 でも、僕はどれくらい日本にいることになるんだろう? 本社としては今回の改革で業績を戻しつつ人材を育て、ゆくゆくはまたその会社だけでやってもらいたいようだ。だから今回派遣される新社長も、業績が回復するまでの期間限定らしい。つまり、彼の手腕にかかっているのだ。 だからといって一年や二年で業績を戻すなんて無理だよね・・・。そうすると、瑛翔の学校のことも考えなきゃいけないし・・・あ、休日には瑛翔を遊ばせられる公園も近くに欲しい。 条件が多すぎてなかなかいい物件が見つからない。 仕事の引き継ぎも引越しの準備もとりあえずやってれば終わるけれど、こればかりは全然進まなかった。 でも、異動の日は決まっている。 住まい選びに一番難航したものの、迫り来る帰国の日に妥協をし、とりあえず何年か先の学校の条件と近くの公園の条件を外したらそれなりにいい所があった。 学校はその時考えよう。公園も、近くはないけど歩いて行ける距離にあるし・・・。 そう思えば、ここはとてもいい物件だった。 会社から歩いて5分。途中にコンビニもあるし会社から見て駅と反対側だから、よっぽど近くに住んでいない限り兄と会う心配はない。 そうと決まれば急がなくては。 僕は必要な手続きを済ませ、家具の手配もした。 帰国までの日数を考えるとギリギリだけど、とりあえず間に合ってほっとした。 会社での引き継ぎも終え、部長に感謝を込めた別れを告げると、あとは帰国を待つばかりとなった。 色々忙しくしている時はよかったけれど、全ての準備を終えて時間に余裕ができると、途端に僕の心に恐怖と不安が襲ってくる。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!