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「いいよ。えいと待ってる」
そんな瑛翔の頭を撫でて、僕は教えられた番号に電話をした。するとそれは直ぐに繋がった。
「ハロー、Mr.ジョンソン?はじめまして。僕はユイト・サワタリです。本社の方に電話を頂いたようですが、どう言ったご用件でしょうか?」
『やあ、ユイト。こんにちは。実は明日日本に出発と聞いて、その前に一度会えないかと思って連絡したんだ。私は今空港近くのRホテルに泊まっていてね、もし良かったら食事でもどうかな?』
初対面とは思えないフランクな物言いに、僕は少し面食らう。しかもこの人は社長で僕のボスだ。
だけど、あちらの会社で初顔合わせするよりは、事前に少し親睦を深めておくのもいいかもしれない。それに彼が泊まっているホテルは今夜僕達も泊まる場所だった。だけど、瑛翔を置いていく訳にも行かない。
「いいですが、こちらには小さい子がおりまして・・・。ご迷惑をおかけしてしまうかもしれません」
子供のことを言ってダメならやめよう、そう思ったのだけど、スマホの向こうから笑い声が聞こえた。
『聞いているよ。僕は子供が好きだから大丈夫。むしろ会いたいくらいだよ。じゃあOKだね。では場所は・・・』
そこで僕は失礼を承知で言葉をさえぎった。
「あの、僕達も今日はRホテルに泊まる予定なんです。今から行くので、ホテルのラウンジとかどうですか?」
その提案にアダムは快く承諾してくれた。
『ではホテルに着いたら連絡をくれ。下に降りていくよ』
「わかりました。ではまた後ほど」
そう言って電話を切った。
「おまたせ。さ、行こうか」
電話の邪魔にならないように大人しく待っていた瑛翔の頭に手を置いてそう言うと、瑛翔はにぱっと笑って大きく頷いた。そして僕達は手を繋いで部屋を後にした。
僕達は途中不動産屋に寄って鍵を返し、Rホテルへと向かった。荷物が多いのでタクシーを使うと思いの外早くつき、僕達は先にチェックインして荷物を部屋に置きに行くことにした。
滅多に外泊しない瑛翔はうれしそうに部屋をパタパタ見て周り、ベッドにパフっと横になったりしている。それを見ながら適当に荷物を置き、アダムに電話した。
「Mr.ジョンソン、ホテルに着きました。今部屋にチェックインしたのですが、どこに行けばいいですか?」
お店に入るなら直接そちらに向かおうと思ったのだけど、アダムからは意外な答えが返ってきた。
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