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男の子がインターフォンのボタンを押すと、家の中からかん高い犬の鳴き声が聞こえてきた。
『はい』
しばらくするとインターフォンの応答があり、わたしはあわててネコをインターフォンについたカメラの前に差し出した。
『うわっ、見つかったんだ!』
それだけ言うと、そのままインターフォンは切れた。
ダダダダッ! と廊下を走る音のあと、乱暴にドアを開けて、短髪でよく日焼けした男の子が飛び出してきた。
「あれっ。おまえ、うちのクラスの……兎本、だよな?」
ネコを抱いて立っているわたしのことをまじまじと見ながら犬飼くんが言った。
うちのクラスってことは……?
ここまでいっしょに来た男の子の方を見ると、コクリとひとつうなずいた。
「こいつ、同じクラスの犬飼亮介」
そう言われてみれば、たしかに見覚えのある男の子……のような気がする。
「みー太ぁ。もう窓が開いてるからって勝手にどっかいったらダメだぞぉ」
猫なで声でそう言いながら、犬飼くんがわたしからネコを受け取った。
「なーぉ」
みー太が、甘えた声でひと声鳴いた。
「兎本も大和も、ほんとーにありがとな!」
「ううん。わたしはたまたまネコちゃんのそばにいただけだから、全然なんにもしてないよ……」
「ってことは兎本、転校早々YOTのメンバーになったってことか」
「YOT?」
聞き慣れないことばに、わたしは小首をかしげて犬飼くんに聞き返した。
「それはっ! まだだから。今回はたまたま手伝ってもらっただけで。なっ」
犬飼くんに目配せしながら、男の子があわてた様子で言う。
「ふぅん。そうなんだー」
なんて言いながらも、もうすでに犬飼くんは腕の中のみー太のことしか眼中にないみたいで。
「みー太、腹へっただろ。ケガしてないか? うん?」
犬飼くんにやさしくなでられて、みー太が気持ちよさそうにしている。
「じゃあ、またあしたなー」
男の子は片手を上げてそう言うと、元来た方へと歩き出した。
「じ、じゃあね」
わたしも男の子のあとを追いかけて犬飼くんの家をあとにした。
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