2人が本棚に入れています
本棚に追加
2.YOTってなに?
「ねえねえ、聞いた? 亮介の話」
「聞いた聞いた! 10日くらい行方不明だったんでしょ、亮介んとこのネコ」
「でもわたし、YOTじゃなくて兎本さんが見つけたって聞いたけど」
「そうそう! だからさ、兎本さんもYOTに入ったんだって、きっと」
教室内のウワサ話になんとなく耳を傾けていたら、またYOTという単語が聞こえてきた。
しかもわたしがYOTに入ったとか言ってるし!
昨日犬飼くんも言ってたけど、一体なんのことだろう?
「えー、でもまだ引っ越してきたばっかでしょ? どうやって入ったんだろ。わたしも前に入りたいって言ったのにダメって言われたんだよねぇ」
不服そうな声とともに、なんだか険悪な雰囲気がただよいはじめる。
「だってさぁ、YOTに入ったら、一哉くんにもお近づきになれるってことでしょ? だからわたしも入りたかったのになぁ」
「兎本さん、どんな手使ったんだろうね」
「そういう子ってたまにいるんだよねぇ。なんの苦労もしないで、ほしいものを全部手に入れちゃう子」
突然、ギンッ! と敵意をはらんだ視線にさらされて、わたしは自分の席でちぢこまった。
なんなの、一体!?
YOTっていうのがなにかもわからなければ、「一哉くん」っていうのがだれなのかも知らないし。
そもそも「なんの苦労もしないで、ほしいものを全部手に入れちゃう子」なんて、わたしとは正反対の人間だよ。
お父さんもいない、友だちもいないわたしに、うらやましがられる要素なんかあるわけがないのに。
最初のコメントを投稿しよう!