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1.見られちゃった!?
あーあ。結局今日は、だれともしゃべれなかったな。
ひとりぼっちの帰り道で、小さなため息がもれる。
5月の連休中におじいちゃん家に引っ越したわたし兎本実桜は、今日はじめて新しい小学校――山羊山小学校へ登校した。
だけど、中途ハンパな時期の引っ越しに、わたしのクラス6年2組の友だちの輪はすっかりできあがっていて、わたしの入る余地なんてどこにもなかった。
「ねえ、おまえどこの子? わたしと友だちになってくれない?」
わたしは、塀の上のでひなたぼっこをしているデブネコに話しかけた。
白と茶と黒の三毛ネコで、毛並みがツヤツヤしていてとってもきれい。どこかのおうちの飼いネコかなぁ?
『人間は人間同士仲よくなりな。オレらみたいなのに甘えちゃダメだ』
片目を開けてこっちをチラッと見たネコにさとされる。
「おまえまでそんな冷たいこと言うの? ヒドイなあ」
わたしが怒ったフリをしてほっぺたをふくらませていると、
「なあ、そのネコ――」
うしろから突然男の子の声がして、ビクッと肩がはねる。
ヤバい。今、ネコとしゃべってるとこ見られちゃった!?
わたしはうしろを振り返らないようにして、とっさに走って逃げようとした。
「ちょっと待てって! そいつ、全然つかまらなくて困ってたんだよ。迷いネコなんだ。飼い主に探してほしいってたのまれててさ!」
男の子のことばに足を止めたわたしは、ゆっくりと振り向いた。
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