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4.べに花
タイトル『べに花』
作≫けいたん
≫花の収穫は鋭いとげが朝露を含んで柔らかくなるときと決まっているから、まだ暗いうちに籠を背負い畠へと向かう。
「転ぶなよ、足もとよう見とけ」
「あんちゃんもね」
「あんちゃんはやめろ。めおとになったのやから」
朝もやにまぎれ、どちらともなく唇を寄せた。
「めおとになれて幸せや」
紅で装うことも知らない若妻のほおをなで、もういちどもっと深く唇を合わせた。
「あたしもあんちゃんのお嫁さんになれて幸せや」
「だからあんちゃんはやめろ」
2人は笑いだし、それを合図に谷間に日が差した。
「お前のほっぺは花みたいやなあ」
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